夢を見た。
そこに一緒にいたのは相手は誰だったか覚えてないが、自分と同年代くらいの男だった気がする。特に一緒にいることで緊張もなかったため、見知った関係の人物だったかもしれない。
場所や経緯はもう不明だが、僕とその男はスパーリングをしていた。
互いにボクシングの要領で両こぶしを顔の高さまで覆うようにガードを張りつつ、タッタッタッと未熟な素人のフットワークで間合いを測って、リスクがない時に左手で牽制のジャブを空(くう)に打つ。
しかし、二人の間には敵意はなかった。僕は相手を痛めつけようとは微塵も考えていなかったし、相手からもそのような気はないという雰囲気を感じ取ることができた。
雑スパーリングをしばらくやっていると、やがて続けていても面白くなる展開は起こらないことを次第に理解してくると共に、止め時が分からなくなるものだ。
「うぇ~い」
どちらが先だったか、ジャブに合わせて戯れ特有の意味なき単語を口に出してしまった。うぇ~いが出たら最早この世はおしまいである。瞬間、今まで行ってきた元々高くないやりとりの偏差値は大暴落してしまった。
「うぇ~い」
僕はジャブをゆったりとした速度で繰り出し、相手の三角筋や上腕二頭筋の間あたりに拳をぶつけた。筋肉の厚い所に当てたほうが痛くないからだ。殴るというより、拳で相手を軽く押すような感じで。
相手も同じようなことをこちらにもして、そんなことを数回繰り返し、「やるな」「お前もな」みたいな意味のない言葉を交わすと、やがてスパーリングは自然消滅した。
やがて、ふと、肩パンをされる時にペリーが服の肩につけてるアレ、あったほうが強くね?と思いついたのだ。
ズボンのポケットからスマホを取り出す。しかし、あの肩のやつって名前なんだろう。
「服 肩 装飾」で検索してみた。
ここは夢の中なので、この世界を構成する情報は夢を見ている僕自身の持っている知識以上にはなり得ない。
当然ながら結局その肩のヤツの名前はわからなかった。
検索エンジンで上位に出てきた画像は基本的に彩度が低く灰色で、もやがかかったように輪郭がはっきりしないものばかりだ。そのせいか、その時見た映像が思い出せない。
夢から目が覚めた時、夢の中でインターネット検索をするということが初めてだったので、凄く不思議な感覚だった。
もっと知識のある人が夢の中で検索をかけたらどうなるのだろう。また、自分が知っているようなことであればどのような検索結果となるのだろう。
それはそれとして、肩のヤツの名前を調べてみた。
肩章というらしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A9%E7%AB%A0
装飾目的だったり装備品の固定、階級章の取り付けなど色々役割があるみたい。
楽天で片方1000~1500円くらいで売ってありました。
夢って、自分向けにパーソナライズされた映像作品みたいなものなので結構好きなんだよね。
以前見た夢の中で、上体を地面に対して平行になるほど倒し、体操のT字バランスのような体勢で中段蹴りをする技は「ビバルディキック」という名前が付けられていると夢の住人に教わったことがある。
律儀に目覚めた後にスマホのメモ帳に記録し、後で検索して真偽を確かめたらそのような単語は地球上に存在しないと判明した。
ビバルディさんに申し訳ない。ちなみに、ビバルディ(ヴィヴァルディ)は17世紀のイタリア出身の音楽家で、代表曲として「四季」などがある方です。8月11日。